ワークショップ

三月の地方発送

今回お届けするのはホワイトデー前ということもあり「自分だったら、こんな焼菓子を贈られたらうれしいな」と思うものをご用意させていただきました。
プラリネと抹茶のケーク以外は以前から作り続けているものですが、こうしたほうがより美味
しくなるんじゃないか?と思いついた事はどんどん取り入れてブラッシュアップしているので少しづつ進化?深化していると思います。
そういった気付きを得るために、以前はお菓子屋さんばかり訪ね歩いていましたが、最近は行
かなくなりました。製菓以外の自分が興味を持っている事だったり、憧れる人の考えや仕事に触
れる事、自分自身としっかり向きあう事のほうが今は大切に思えます。先日も上京した際、師匠が食事に連れて行ってくださったのですが、そのレストランのシェフ
と師匠との会話を聞かせていただけた事が自分には何よりの糧となりました。師匠がシェフに投げかけた「いまでも前に立って続けれられるその秘訣ってなんですか?」と
の問いに「うーん….ときめいていたいよね」と答えられた、御年六十五歳の巨匠の瞳は少年のように輝いてました。
まだ上手になっていると感じてる、新しい技術や知らなかった素材に出会うとワクワクする….
六十代のお二人の会話の端々から、素材をよく見て、知り、それをどう生かすかを突き詰めな
いと、心を打つような美味しいものは作れないとあらためて教えられました。
お菓子屋さんには全然行ってないのですが、たくさんの学びと気付きをいただいた二日間でし
た。人の心を動かすような食べ物が作れる、知識や経験が頭に、技術が腕に詰まっている職人
さんって本当にカッコイイ。自分もそうなりたいと強く思いました。

 

猫の額ほどの広さですが、敷地の一角を耕しました。クロモジ、黒イチジク、
アーモンド、マルメロ….などなど、植えてみたいものは沢山ありますが

どれも食べられるものばかりですね….僕は花より団子のようです。   店主

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<ケーク・エラブル>

 

しっとりと口溶けの良く仕立てた生地に
カナダ産オーガニックメープルシロップをふんだんに混ぜ込んで
焼き上げました。
いつも早くに無くなってしまう人気のパウンドケーキです。

うまく言葉にできないのですが
なんともホッとする美味しさです。

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< ジョア >

先月からショーケースに仲間入りしました。

しっとりと蒸し上げた密な食感のクリームチーズのアパレイユと
対照的な軽い食感の道産クリームチーズのムース、
甘酸っぱいパッションフルーツのジュレ、
ミルキーなホワイトチョコレートの薄板、
香ばしく焼き上げた全粒粉入りのサブレ
の組合せです。

昨夜は吹雪いていたし、今朝もバリバリに凍っていましたが
店先の杏の蕾や欅の芽はしっかり膨らんできています。
冬の景色の中にも春の訪れを感じる、
そんな気持ちで作ったお菓子です。

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<プラリーヌ>

アーモンドにバニラ風味の糖衣を
何層にもまとわせながら
香ばしく火入れしたお菓子です。

カリッとした歯ざわりのあと、咀嚼するにつれ
口中に広がるアーモンドの深い味わいとバニラの香り。
まわりを覆う糖衣にもバニラとアーモンドの香りが
しっかり移っていて、やめられない、止まらない美味しさです!

エスプレッソや珈琲ともとても相性が良いです。

小さな角瓶に詰めて御用意致しました。

価値を測る定規

私は好きで薪を使ってお菓子を焼いたり、
石窯でパンを焼いたりしていますが、
とっても不効率で生産性も良くなくて
とても人様にお勧めすることは出来ません。

それに、もしみんなが薪を使いはじめたら
煙の害や火事も増える。
日本の人口が3000万~5000万人だった
江戸末期から明治にかけた頃、
化石燃料に移行する前は木を切り尽くして
日本中が禿げ山だらけだったという話を聞きました。
それが本当なら、今の人口でその当時のように薪や炭を使ったら
あっという間に木はなくなるでしょうね。

先日も味噌作りの投稿をしましたし、
店のまわりで果樹やハーブを育てているので
何でも自分でやってみたい性分なのだと思いますが
本当は「餅は餅屋」だと思っています。
専門の仕事を突き詰める職人さんが大好きで尊敬しています。
専門外な仕事はその道の人に任せたいと思っています。
職人が手塩にかけたものを作って、
消費者がそれに見合った対価を払う。
それで経済が回る事が理想だと思います。

それでも味噌を作ったり、魚を釣ったり、
箱庭に果樹を植えたりハーブや野菜を作ってみるのは
物の価値を見定める目を養いたいと思うからです。

畑でなくてもベランダのプランターでも
なんでもいいから大根一本自分で育ててみたら、
生産者さんの苦労の一片を感じることができます。
自分が大変な思いをして作った大根を
誰かに欲しいと言われたら
いくらだったら譲るかな?と考えてみると
スーパーや八百屋さんの売値が生産者さんにとって
適正かどうかわかると思うんです。
自分で材料を買ってきて寸法測って、
ノコや玄能を使って犬小屋を作ってみたら
その労力が幾らかわかる。
自分がやった場合の完成度と人件費と比べてみて、
対価を払ってやってもらうべきか
自分でやったほうが満足が得られるか判断する。
そういった事を積み重ねて、素材や生産者さん、
職人さんへの敬意や、価値を見定める自分なりの尺度を持ちたい。

高価な道具を買う時も同じで、
たとえば鋳物の鍋は何万円もしますが、
これを誰かに借りたとしたら1回いくら払うかな?
どんな料理に使うかな?
年に何回使うかな?と考えて
自分に今ほんとうに必要かしっかり考えてから買うようにしています。
鞄や服でもみんな同じ。

出来るだけ身の回りの物は少ないほうがいい。
自分に本当に必要なものが見えて、整理でき、
大切に扱い愛でるようになる。

価値観は人それぞれですから、
他の人と同じである必要はないですが
そういった考えを巡らせるなかで、
自らの身の丈を知ることが出来ると僕は思っています。

世の潮流は時代によって
右にも左にも、良いほうにも悪いほうにも
大きく振れるのだと思います。
でもそんなときこそ
過去から学び、価値を見定め
その中庸を導き出すことが
今を生きる自分たちの責任なのだと思います。

この二日間の上京で
田舎と街の空気の違いを感じ、
おいしい食事をいただき、
自分の大好きなお菓子を食べ、
大切で素敵な人に会って語らうなかで
自分がやりたい事、進むべき道、
拠って立つ所を再確認させてもらいました。

自分はとっても非力だけど
たくさんの人に活かされているのだと
心の底から感じ、感謝の気持ちでいっぱいです。

二月の地方発送

今回お届けするのはバレンタインデー前ということもあり、チョコレートを使った商品です。
焼菓子や、生菓子、ボンボンショコラに、コンフィチュール、使い方によってさまざまな表
情を見せるチョコレートはとても魅力的な素材のひとつです。
今回は焼き物を中心にお届けしています。食感や、組合せる素材はさまざまですが、どの商品
にも共通しているのは口溶けの良さだと思います。チョコレートを多く配合する事で油脂分が
増え、重たい食感になりがちですが、混ぜ方や泡立て方で軽い食感に仕立て、お菓子の骨格と
なるグルテンを必要最低限しか出さないように作っています。
何度も繰り返した中で蓄積し、誰が見てもわかるように数値化したデータと、変化する生地が
見せる一瞬の表情を読み取るという、なんとも言葉になりにくい直感のようなものを駆使して
お菓子を作ります。誰にでもわかるデータと、おそらく個人にしか見えない多分に感覚的なところ….相反する事のようにも思えますが、おいしい食べ物を作る上での両輪だと思っています。

生地を作ってオーブンに入れてしまえば、もうやり直しは出来ません。製菓は調理のように、あとから味の調整をすることも出来ません。見えない生地の中の状態を想像し、そこから逆算して素材の温度、泡立て方、混ぜ方、を選択
して生地を作る。これが思い通りに決まったとき、または想像以上の出来上がりになった時の
喜びといったらありません!そんな瞬間に出会いたくて、前回より美味しくするためには?こうしてみたらどうだろう?と試行錯誤しながら毎日粉にまみれています。

今年も無事味噌を仕込み終わりました。10ヶ月後、
どんな味わいに変化しているのか今からとても楽しみです。   店主

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味噌作り

大寒は過ぎましたが、毎年ちょうどこの寒い時期に
越前のマルカワ味噌さんから自然栽培白米麹と
有機栽培のさといらずを取り寄せ、家族で味噌を仕込みます。
今回で4度目となります。
回を重ねるごとに、香りもよくなり、
確実に美味しくなっているのでやり甲斐があります。
豆を洗い水に浸すところから二日間の作業を集中して行なえば、
一年間はおいしい味噌汁を飲み続けることができるのだから
俄然気合いが入ります。
衛生的に仕込めば、よく言われる天地返しなども必要ありません。
とても簡単なんです。
菌が心地よい状態を作ってあげれば、
勝手に醸してくれます。

今日仕込んだ味噌を寝かせるために
昨年仕込んだ味噌が入った木桶を開けていたのですが、
あまりの香りの良さに驚きました。
みんなでおいしい!と連呼しながら
沢山つまみ食いしました。
豆の浸水具合、炊き加減、つぶす粗さ、
麹の種類、塩の選定、桶の種類、
保存箇所の温度….などなど、
出来上がりを左右する項目はたくさんありますが、
繰り返す中で、少しづつですがブラッシュアップ出来ていると思います。

父や母の世代のひとたちは、「私たちが幼い頃はこうやって
それぞれのうちの土間で作ってたんだ」と懐かしそうに話してくれますが
普段の生活では大手メーカーの速醸味噌を何の疑いもなく使っていたりします。
味噌の作り方も、身近な人から教えてもらった訳ではなくて
ネットで調べて学びました。
日本人にはとても身近な調味料なのに。
戦後の時代背景もあったのだと思いますが
効率や利益を求めつづけた結果、
大切な事がおざなりになってぽっかり穴が開いてしまってるようで
なんだか寂しいんです。

その土地ごとに適した作物を食べて身体を作り、
その土地ごとの気候の中で暮らし、、
その土地ごとの文化の中で情操を育む。
多様性を感じ、認め、溢れる様々な情報の中から、自分が大切に思うものを
取捨選択することが生きる根幹だと思うのですが
田舎であればあるほど、選択肢は限られ
一様である事が求められているような気がします。

味噌作りも続けてやっていれば、子供たちも次はどうするのかが
分かってきたようです。
彼女たちが大人になったとき、
既製品の味噌を買い求めるのか
自分で作ってみようとするのかはわかりませんが
味噌を作ったことがあるという記憶は
残っているのではないかと思います。
僕は幼い時にやった事がなかった、
子供たちはやったことがある。
この違いは大きいと思います。

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今のこの営みが、彼女や彼らの
人生の選択の一助になれば良いのですが。
今年は1/3を麹を変えて麦味噌にしてみました。
一年後、どんな味わいになっているのか楽しみです。

一月後半の地方発送

今回お届けするのは、ガトー・ア・ラ・ブロッシュ/Gâteau à la broche と パン・ド・カン
パーニュ/Pain de campagneなどです。
ガトー・ア・ラ・ブロッシュは薪の直火で、パン・ド・カンパーニュは薪の炎で石窯をあた
ため、その輻射熱で焼き上げます。どちらも電気のなかった時代から、淘汰されること無く連
綿と受け継がれてきた製法で作られています。現代の経済で言えば、大量生産出来ず、手間が
かかって不効率、利益も出ない…..商売において良いところなんて何にもないのですが、僕に
はたまらなく愛おしい商品で、開業以来、大切に焼き続けています。 淘汰されずに残ってきたものは手間隙をかけないと出来ないものが多いです。
電気やガスの火力と違って容易にコントロール出来ないから、生地の温度、樹種の剪定、薪の
太さ、焼べるタイミング、どれをとっても本当に微妙なもので、とにかく観察し違いを見比べ
て細かく調整するしかない。自分で原木を玉切りし、割って乾かした薪はとても愛おしく、大
切に扱います。
また前者は卵、国産小麦粉、バター、砂糖、塩。後者は国産小麦粉、塩、水のみというとても
シンプルな配合です。お客様から「ここのはちょっと味わいが違うね」とよく声をかけていた
だくのですが、材料は特段変わったものは使っていません。それでも味わいに違いが出るのは抽象的ではありますが、素材を見つめ、生産者を思い、お客様に喜んでいただくという気持ち
の部分を大切にしているからだと思います。これは効率や利益ばかりを見ていては気付くこと
ができない。一見、面倒で不効率なことなんですが、そこにおいしさや、豊かさ、もの作りの
本質があるのではないかと感じています。

今大切に思える先人の知恵や教えを本当は私たちの父や母の世代につないで欲しかった。
以前はそのことを残念に思っていましたが新しい価値を産み出そうとした戦後の混沌の中では
無理だったのかな…と思うようにしています。
だからこそ、僕らの世代が80代、90代の方々が身体で憶えている生きた知恵をワークショッ
プに参加したり、先人から教えてもらって、次の世代に繋いでいかなければと、こんなお菓子
やパンを作りながら思っています。

 

山陰でもやっと雪が降りはじめ、本格的な冬の寒さがやってきました。夏は汗だくになって辛い石窯の作業も、じんわりと包まれるような暖かさに
居眠りしてしまいそうな心地良さを感じる今日この頃です。   店主

ガトー・ア・ラ・ブロッシュ

出来上がりを左右する、
生地の温度、
樹種の剪定、
薪の太さ、
焼べるタイミング、
どれをとっても本当に微妙なもので
翻弄されっぱなし。

思ったように焼き上がらなかった時は
何でこんな手間なことやってるんだろう?とか
もうやめようかなぁ〜なんて気持ちが頭をもたげるんですが
焼成台の熾きや灰を片付ける頃には
次はこうやってみたら….
あそこでこう変えたら良くなるかもしれない….と
闘志のようなものが湧いてきます。

次はもっと上手に焼けるはず。

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アラウンドボード

うちのカンパーニュの様に大きなパンって
家庭の小さなまな板の上では少し切りづらいですよね。
ずっと何かいい方法はないかなぁ?と模索していたのですが
西粟倉の木工作家:フレル山田さんに相談したところ
快諾して下さり、大きなパンをカットするための
カッティングボードを作ってもらいました。

折角の大きなカッティングボード、
パンを切るだけじゃもったいない….。
ローストチキンや、かたまりで焼いた
大きなお肉を取り分けたり、
シャルキュトリーやチーズ、お惣菜を盛り合わせてみたりと
様々なシーンで利用出来るものが出来ないかと考えました。
僕が1kgの大きなパンを焼くのも、
時間をかけて変化を楽しみながら
切り分けて食べて欲しい、家族や友人とその時間を
共有して欲しいと思うからです。

大切な人と囲む食卓に
ぬくもりのある木で作ったカッティングボードを添えたい
というイメージを山田さんに伝えたところ
とっても素敵な作品を作って下さいました。

試作を重ねるなかで、反りにくいようにと
西粟倉産のヒノキの本体の両側に添えられた
チェリーまたはウォルナットで出来た持ち手部分の意匠や
パン屑を受ける溝も、肉汁や水分の多いお惣菜を盛った時に
汁気を受け止められるように。
また角の広くなった溝は
薬味などを盛りつける場所としても使えるようにと
様々なシチュエーションで活躍するよう
考え抜いて下さいました。

我が家でも大活躍しています!

サイズ:タテ480 × ヨコ300 × 厚さ22 (mm)
樹種:ヒノキベースでチェリーとウォルナットの二種類