一月後半の地方発送

今回お届けするのは、ガトー・ア・ラ・ブロッシュ/Gâteau à la broche と パン・ド・カン
パーニュ/Pain de campagneなどです。
ガトー・ア・ラ・ブロッシュは薪の直火で、パン・ド・カンパーニュは薪の炎で石窯をあた
ため、その輻射熱で焼き上げます。どちらも電気のなかった時代から、淘汰されること無く連
綿と受け継がれてきた製法で作られています。現代の経済で言えば、大量生産出来ず、手間が
かかって不効率、利益も出ない…..商売において良いところなんて何にもないのですが、僕に
はたまらなく愛おしい商品で、開業以来、大切に焼き続けています。 淘汰されずに残ってきたものは手間隙をかけないと出来ないものが多いです。
電気やガスの火力と違って容易にコントロール出来ないから、生地の温度、樹種の剪定、薪の
太さ、焼べるタイミング、どれをとっても本当に微妙なもので、とにかく観察し違いを見比べ
て細かく調整するしかない。自分で原木を玉切りし、割って乾かした薪はとても愛おしく、大
切に扱います。
また前者は卵、国産小麦粉、バター、砂糖、塩。後者は国産小麦粉、塩、水のみというとても
シンプルな配合です。お客様から「ここのはちょっと味わいが違うね」とよく声をかけていた
だくのですが、材料は特段変わったものは使っていません。それでも味わいに違いが出るのは抽象的ではありますが、素材を見つめ、生産者を思い、お客様に喜んでいただくという気持ち
の部分を大切にしているからだと思います。これは効率や利益ばかりを見ていては気付くこと
ができない。一見、面倒で不効率なことなんですが、そこにおいしさや、豊かさ、もの作りの
本質があるのではないかと感じています。

今大切に思える先人の知恵や教えを本当は私たちの父や母の世代につないで欲しかった。
以前はそのことを残念に思っていましたが新しい価値を産み出そうとした戦後の混沌の中では
無理だったのかな…と思うようにしています。
だからこそ、僕らの世代が80代、90代の方々が身体で憶えている生きた知恵をワークショッ
プに参加したり、先人から教えてもらって、次の世代に繋いでいかなければと、こんなお菓子
やパンを作りながら思っています。

 

山陰でもやっと雪が降りはじめ、本格的な冬の寒さがやってきました。夏は汗だくになって辛い石窯の作業も、じんわりと包まれるような暖かさに
居眠りしてしまいそうな心地良さを感じる今日この頃です。   店主