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年頭所感

15年ほど前に埼玉スーパーアリーナの一角にあった
ジョンレノンミュージアムを訪れた際に買ったポストカード。
今はお店の一角に貼っています。

清志郎さんもそうだけど、
その偉大さに気づくのは
居なくなってから。

食に携わる仕事をしていて
届ける品物に思いを込めたり
知り得た気付きを伝える中で
召し上がってくださった方が
「身体を作る食べもの」を意識することで
誰かを思いやったり、物を大切にする気持ちが生まれて
更には違いを認め合うことに繋がって
その延長線上で「争いがなくなる」ってことはないかなー。

仕事を、生き方を通してそこに貢献したい。
あらためてそんなことを思った2017年の年頭です。

#ジョンレノン#忌野清志郎#愛と平和#WarIsOver#JohnLennon#ifyouwantit

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年末の所感

今年は後半に通販を再開して、遠方の多くのリピーターのお客様に
ご注文をいただけたことがきっかけで
改めて「うちのお菓子の価値は何かな?」と考えることができました。

お菓子の名前は同じものが多いですし、使う材料も限られています。
自分ではこんなに良い素材を使って、こんなに手間暇かけてるのに…と思ったとしても、
その価値はなかなかお客様には伝わらないのだと思います。

お菓子を構成するパーツはとても多種類ですし、混ぜたりこねたり切ったり冷やしたり焼いたりと工程も複雑です。自分が譲れなくて大切にしていることの差異は、
ひとつひとつはとっても小さなものかもしれませんが
それを積み重ねることで、ここにしかない特別なものが出来上がるのだと
信じて仕事をしています。

今年は身の回りでもいろんな変化があり、
思いついたことを書き留めても、言葉がきつくなったり
思うことと行動に整合性が取れなくて、四苦八苦したりすることが多く
なかなか想いを言葉にすることができませんでした。

来年はもっと意識して記事を書き、
私が好きな素材のことや、大切にしている工程や作業など、
なかなか普段は見えないうちのお菓子の背景にあるものを
興味を持ってくださるお客様にお伝えしていければと思っています。

地方にいると楽天やAmazonのようにポチッとすることですぐに品物が届き、
助けられることも多いのですが、大切な人の血となり肉となる食べ物であったり
機械にはまだ取って代わることのできない、作り手の技術や知識、思想や人となりが
価値を左右する品物の場合は、見知った人や信用できる人から買いたいと思います。
これだけ情報があふれる今では、誇張したキャッチコピーや華やかな宣伝広告は
逆に白々しく思えてしまいます。
私自身、何を買うか?ということより、誰から買うか?ということのほうが
大切な基準になってきました。
ものづくりでも、サーヴィスを提供する仕事でも、
最後はそれに携わる「人」だと思っています。

人の価値観は様々ですから、万人に受け入れられるとは思いませんが
自分が大切にしている思い、日々の営み、日常のたわいもないことを
お伝えする中で、共感していただけるお客様と繋がっていけたら嬉しいです。
来年はそんな一年にしたいと思います。

今年もご愛顧ありがとうございました。
皆様も良いお年をお迎えください。

お店は31日まで、(商品が売り切れ次第閉店させていただきます。)
年始は4日より営業いたします。

明日は、パンドカンパーニュ、チャバタ、ガレットデロアも焼き上げる予定です。

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デコレーションケーキに対する思い

トゥジュールでは、デコレーションケーキの御予約をお渡し日の前日までにいただいております。

当日でもお渡し出来る商品も、いくつか取り揃えておりますが
いちばん需要のある、いわゆるショートケーキ様(フルーツ、生クリーム、スポンジ)のデコレーションケーキは前日までの御予約をお願いしています。
「15分で出来ます」と作ってくれるお店もあります。
技術的にはそれも可能でしょうが(ウチでは人手が足らなくて無理ですが…)それでは15分なりの味にしかならないと、僕は思っています。

前日から組み上げて、フルーツ、生クリーム、スポンジ
それぞれの水分を適度に移動させることで
一体感を生み出すことが主な理由なのですが
技術的なこと以外に、もうひとつ大事にしたい思いがあります。

最近のお菓子屋さんはショーケースにホールケーキが沢山並び、
お客様のニーズに応えてくれる。
いつ行っても買える。
大切な人の記念日を忘れていても、なんとかなっちゃう(笑)
急な用事にも対応出来て、とても便利です。
実際、ウチのお店でも当日販売分のホールケーキを求めて
ご来店下さるお客様もたくさんおられます。

でも少し淋しい気もするのです。

記念日をお祝いするためでも
旅行の際のお土産でも、
誕生日プレゼントでも、
あの人はこれが好きかな?それともあっちかな?
他のお店の方が喜ぶかな?と考える。
大切な人が好きなものを思い出し
どれだったら喜んでくれるだろう?
とその人のことだけ思う。
日が迫るごとにドキドキする。

すぐにお店に行けば買えてしまうその便利さと引き換えに
そんなかけがえのない時間を
失ってしまっているのですから。

私たちも、お客様のプライベートな時間に
参加させていただくからには
伝わらないかもしれませんが、
ロウソクの数や年齢を見て
漢字を入れるのか、ひらがなで書くのか迷ったり
男性か女性か?どんな場所で?と想像をふくらませて
デコレーションしたり、メッセージを書いたりしています。

微力ながら、私たちも思いを込めて作ったお菓子をお届けしたい。

そんな気持ちから、前もっての御予約をお願い致しております。
ご理解、ご協力をいただけましたら幸いです。

また、種類は限られますが、当日お渡し出来る商品もございますので
急な御入用の際にはご相談下さいませ。

11月下旬の地方発送

この土地でお店を始めた時、一番困ったのはフルーツが手に入らないことでした。
街にいる時には業者さんに前夜にファックスを一枚流しておけば、翌朝には品物が届いていました。苺、ラズベリー、ブルーベリー、ミュール、パイナップル、スターフルーツ、ブラッドオレンジ、ほおずき、マンゴー、パッションフルーツ.....日本全国、また世界の市場から季節は関係ないとばかりにたくさんの品物が揃っていました。こちらでは、青果店のある市内からは遠すぎるため、配達はしてもらえません。また、フレッシュのラズベリーやペリカンマンゴーなど輸入フルーツは「需要がない」と言われて市場にすら入ってきませんでした。手に入る場所は物流が違うAEONなどの大手スーパーだけ。毎日そこに買い出しに行くわけにもいかず、知己の京阪神の業者さんから送ってもらいやりくりしましたが、とても違和感を感じていました。恥ずかしながらそんな状況に身を置いて初めて、自分が扱っている果物の旬はいつなのかな?と調べたような次第です。その過程で、たくさんの流通業者さんや、農家さんの努力で品物を届けてもらっていること、石油燃料を燃やして温めたハウスで、本来の旬でなくても無理して育てていること、海外に日本の苗を持って行き安価な労働力で育てたものを輸入していること、などいろんなことがわかってきました。とても便利ですし、それらを飾ればショーケースは一気に華やぎます。苺の赤は特に鮮烈です。それをのせた商品は真っ先に売れていきます。
商売としては、そこから離れることはとても怖かったのですが、無理してフルーツを使うことをある時期から辞めました。旬の美味しいものが手に入ればその時だけ。それ以外は必要最低限のものしか使わない。生のフルーツを使った華やかな飾りはできないけど、その分中身に加工した<旬の時期に収穫して作られた>ピューレなどを使った層を作り、味わいを出そうと決めました。
なので今でもよくお客様から「ショーケースに色がないね」と言われてしまいますので「中身に詰め込んでおりますので、一度召し上がってみてください」と返答しています。晴れの日のお菓子にはそういった華やかな演出も必要でしょうが、僕は背伸びしないで作る今の自分のお菓子が好きです。手に入らないなら....と少しづつ植えた果樹やハーブが季節ごとに恵みを与えてくれるようになりました。四季の移り変わりを感じながら仕事ができる今の環境をとても愛おしく思っています。

 

年末にしか作らないシュトレンを仕込むのは久しぶりすぎて毎年ドキドキするのですが
その一年に学んだことをどう咀嚼してそのお菓子に落としこむのか考えてブラッシュア
ップしていく作業はとても楽しいです。                 店主

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フレシュール・ショコラ

今まで当店にはなかったチョコレートのムースを使った

ホールケーキをご用意しました。

今までご用意していたガトーショコラや、

湯煎焼きにしたクラシックショコラは
小さいお子様には濃厚すぎる….
とのお客様の声を聞き
ずっと気になっていました。
今回はお子様や若年層の方、

「チョコレートを好きな、どの年代の方にも気に入っていただけるようなお菓子を」
というコンセプトで作りました。

<フレシュール・ショコラ>

なめらかなチョコレートのクレームブリュレと
水分をたっぷり含んだ
軽い口どけのチョコレートムース、
ヴァニラのシロップを染み込ませ、
口どけよくした
アーモンドとチョコレートの生地を重ね、

漆のように艶やかなカカオ風味のグラサージュで覆いました。

チョコレートのお菓子ではありますが、
とても口どけがよく
瑞々しいのが特徴です。

大きさ 8x16cm(5〜6名様分) 2800円  

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お盆明けにお休みをいただいて、
家族で「神さまのおわす国」へ行ってきました。

伺ってみたい所は沢山あったのですが、
いつもは子ども達の迎えなどがあり、
日帰りするのは難しい状況でした。
そういった事情から、今までは
なかなか向かうことができなかったため、
今回は家族で泊まりでゆっくりと出かけました。

ほぼ初めて巡る松江や出雲の街並み。
とても綺麗で美しく、文化が成熟していると
強く印象を受けました。
観光で外から入ってくる方が多いのだと思いますが、
もてなしてくださる心意気を様々なところで感じ、
大好きな街になってしまいました。

まだまだ伺えていないお店や史跡もたくさんあるので、
また必ず訪れたいと思います。

三日もお休みを頂いてしまい、
無事明日から社会復帰できるか不安です…….💦

様々なものを見聞き、体感し多くの刺激をいただきました。
自分が大切にしたいものも、再確認できました。

明日からまた、精一杯自分らしい仕事をしていこうと思います!

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味噌作り

大寒は過ぎましたが、毎年ちょうどこの寒い時期に
越前のマルカワ味噌さんから自然栽培白米麹と
有機栽培のさといらずを取り寄せ、家族で味噌を仕込みます。
今回で4度目となります。
回を重ねるごとに、香りもよくなり、
確実に美味しくなっているのでやり甲斐があります。
豆を洗い水に浸すところから二日間の作業を集中して行なえば、
一年間はおいしい味噌汁を飲み続けることができるのだから
俄然気合いが入ります。
衛生的に仕込めば、よく言われる天地返しなども必要ありません。
とても簡単なんです。
菌が心地よい状態を作ってあげれば、
勝手に醸してくれます。

今日仕込んだ味噌を寝かせるために
昨年仕込んだ味噌が入った木桶を開けていたのですが、
あまりの香りの良さに驚きました。
みんなでおいしい!と連呼しながら
沢山つまみ食いしました。
豆の浸水具合、炊き加減、つぶす粗さ、
麹の種類、塩の選定、桶の種類、
保存箇所の温度….などなど、
出来上がりを左右する項目はたくさんありますが、
繰り返す中で、少しづつですがブラッシュアップ出来ていると思います。

父や母の世代のひとたちは、「私たちが幼い頃はこうやって
それぞれのうちの土間で作ってたんだ」と懐かしそうに話してくれますが
普段の生活では大手メーカーの速醸味噌を何の疑いもなく使っていたりします。
味噌の作り方も、身近な人から教えてもらった訳ではなくて
ネットで調べて学びました。
日本人にはとても身近な調味料なのに。
戦後の時代背景もあったのだと思いますが
効率や利益を求めつづけた結果、
大切な事がおざなりになってぽっかり穴が開いてしまってるようで
なんだか寂しいんです。

その土地ごとに適した作物を食べて身体を作り、
その土地ごとの気候の中で暮らし、、
その土地ごとの文化の中で情操を育む。
多様性を感じ、認め、溢れる様々な情報の中から、自分が大切に思うものを
取捨選択することが生きる根幹だと思うのですが
田舎であればあるほど、選択肢は限られ
一様である事が求められているような気がします。

味噌作りも続けてやっていれば、子供たちも次はどうするのかが
分かってきたようです。
彼女たちが大人になったとき、
既製品の味噌を買い求めるのか
自分で作ってみようとするのかはわかりませんが
味噌を作ったことがあるという記憶は
残っているのではないかと思います。
僕は幼い時にやった事がなかった、
子供たちはやったことがある。
この違いは大きいと思います。

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今のこの営みが、彼女や彼らの
人生の選択の一助になれば良いのですが。
今年は1/3を麹を変えて麦味噌にしてみました。
一年後、どんな味わいになっているのか楽しみです。

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アラウンドボード

うちのカンパーニュの様に大きなパンって
家庭の小さなまな板の上では少し切りづらいですよね。
ずっと何かいい方法はないかなぁ?と模索していたのですが
西粟倉の木工作家:フレル山田さんに相談したところ
快諾して下さり、大きなパンをカットするための
カッティングボードを作ってもらいました。

折角の大きなカッティングボード、
パンを切るだけじゃもったいない….。
ローストチキンや、かたまりで焼いた
大きなお肉を取り分けたり、
シャルキュトリーやチーズ、お惣菜を盛り合わせてみたりと
様々なシーンで利用出来るものが出来ないかと考えました。
僕が1kgの大きなパンを焼くのも、
時間をかけて変化を楽しみながら
切り分けて食べて欲しい、家族や友人とその時間を
共有して欲しいと思うからです。

大切な人と囲む食卓に
ぬくもりのある木で作ったカッティングボードを添えたい
というイメージを山田さんに伝えたところ
とっても素敵な作品を作って下さいました。

試作を重ねるなかで、反りにくいようにと
西粟倉産のヒノキの本体の両側に添えられた
チェリーまたはウォルナットで出来た持ち手部分の意匠や
パン屑を受ける溝も、肉汁や水分の多いお惣菜を盛った時に
汁気を受け止められるように。
また角の広くなった溝は
薬味などを盛りつける場所としても使えるようにと
様々なシチュエーションで活躍するよう
考え抜いて下さいました。

我が家でも大活躍しています!

サイズ:タテ480 × ヨコ300 × 厚さ22 (mm)
樹種:ヒノキベースでチェリーとウォルナットの二種類

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クリスマスを終えて

年末まで営業しているとクリスマスケーキの感想を
お客様から聞かせていただける機会も多く、
お気に召していただけたとの声を聞けると
肩の荷がおりたようでホッとします。

今日も御来店のお客様が予約特典でお渡ししたスペキュロスが美味しかったので…とお買い上げ下さいました。

シュトレンも「いろいろ食べたけど一番ここのが好き!」と
何人ものお客様が仰って下さり、嬉しくて仕方ないのと同時に
来年はもっと美味しいものを作らなくてはと
身の引き締まる思いです。

ここのところ、ずっとお店にこもりっきりでしたが
先日所用で昼間に出かけ、帰ってくる時にお店のまわりの風景を
何とはなしに眺めていたのですが、ウチのお店の所在は
辺りに何もなくて、何かのついでに立ち寄るような所ではないなぁ….と改めて思いました。
年末のお忙しいなか、こんなに辺鄙な場所にあるお店に
わざわざ足を運んでいただいているのだと思うと
胸が熱くなってしまいました。

本当にお客様には感謝の気持ちでいっぱいです。
品切れすることも多く、ご不便をおかけ致しますが
精一杯良い品を届けられるよう、これからも精進致します。

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見た目は変わらないのだけど…..

今までは遠い異国の地で作られた材料で
ベラベッカを作っていましたが
ここ数年、相次ぐ生産地の不作や自然災害で、
材料自体の入荷がなかったり価格が高騰したりと、
作れるかどうか危ぶまれる状態が続いていました。

そんな時。ふと思ったのが、
この地だからこそ出来るベラベッカって
どんなのだろう?ということ。
高いフードマイレージをかけて取り寄せなくても
近くで手に入る素材があれば、気候や為替などに翻弄されずに
作れるんじゃないかと思い立ち、ルセットを再考しました。

ベラベッカは洋梨のパンという意味で、
アルザス地方に古くから伝わる代表的なクリスマスのお菓子です。
洋梨は外せないので以前からお世話になっていた
佐治の中谷さんの作るラフランスを
自家製のセミドライにして加えました。

もう一つ使ってみたかった素材が「柿」。
実家の裏山にある幼少期から幾度となくぼらせてもらった
おばさんの畑の柿の木。
母が熊や猿と競って穫ってきてくれた物を
渋を抜いてからオーブンでセミドライに。

住まっている地域で穫れ、自ら加工した素材を加えて作った
2015年のベラベッカ。
見た目は去年と変わりませんが、いろんな想いが詰まっています。
味わいもとても美味しく仕上がりました。
是非味わっていただきたいです!