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<能動的に食べる>

先日、娘の通う小学校で5、6年生の生徒さんに
お話しさせていただく機会を得ました。

自分のものづくりの体験を通して
私たちが口にしているものにはどんなものが入っているのか?
を話してきました。

私が作るプリンの原材料と、
スーパーなどで売られる大手メーカーの市販品との違い、
自家製のベーコンと
これまたスーパーなどで売られる大手メーカーの
ベーコンやハムに使われる原材料の違いを
どちらがどうということは伏せて原材料一覧を見てもらい
AかB、どちらが食べたいかを選択してもらいました。
また、どんなものが入っていてどんな役割を担っているのか?
生徒さんが疑問に思ったものを私が質問に答える形で説明しました。

身近な食べ物の原材料一覧 原材料一覧

一覧にしてみると、結構な違いですね。私も驚きました(笑)

自分自身のお菓子の作り方、一般的な作り方との違い、
なぜ手間隙をかけるのか?ということも交えて話しました。

「それぞれメリットやデメリットがあって、
どちらが良いかは個々の価値観で違ってくるから一概には言えませんが
体は食べたもので作られるのだから、
よくわからないものを知らないで食べるのは嫌じゃない?
ちょっと怖いことですよね、
メーカーさんは使っている原材料、添加物も表示してくれてますから
一度手にとって見てみてください。
自分たちが食べているものは、
何処の誰がどんな風に作ったものなのか?
よく考えてみてください」

話のあとにプリンを試食してもらい、

「おじさんはお菓子づくりが好きで好きでしょうがない、
この仕事を通して誰かの役に立ちたい、
誰かの喜びにつながる仕事をしたい。
みんなも大好きなことを見つけて、
一生懸命学んで、それが仕事にできると良いですね。
おじさんもまだまだ勉強し続けます」
というようなことを伝えてタイムアップ。

 

半ば強引な幕引きでしたが、
先生の協力のもと、何とか話し終えることができました。

実は昨年末に地域の中学校に招かれてお話ししたのですが
見事にテンパってしまって、
何を話してるのか自分でもよくわからなくなってしまいました。
生徒がどんどん引いていくのがわかって
貴重な学びの時間を割いてもらったのに何にも伝えられなくて
申し訳ないことをした…と反省しきりでした💦

短い時間で何か一つでも印象に残るようなことを話せないかと
事前に植松努さんのTEDを
YOUTUBEで見なおしたりして臨みましたが
付け焼き刃は..なんとやらですね。
今回もなかなか思っていたようには話せませんでした💦

しかし、子どもたちの眼差しはとっても真剣で、
想像していなかった角度から意見を述べてくれたりして
私自身とても学ぶことの多い、貴重な時間をすごせました。

後日、子どもたちが書いて渡してくれた50枚近い感想文、
名前と顔をよく知る妻に、ひとりひとり確認しながら
顔を思い浮かべて読ませてもらいました。
宝物が一つ増えました。
大切に仕舞っておきます。

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今は受動的に食べることしかできないだろうけど
あと何年か経って独り立ちする時に、
自分で見定めた選択肢から選べるようになって欲しい。
<能動的に食べる>という方法があることに気付いて欲しいな、
そういえば変なケーキ屋のおっさんが、昔そんな話ししてたなぁ…
って思い出してもらえたら嬉しいです。

この子たちの世代に対して
大人がしっかりと責任を持たないといけないな、
少しでも良い未来を繋いでいかなければ!
という思いを新たにしました。

お菓子を作りながら考えたこと 03/06/17

先日から、少し悩んでいました。
友人と話す中で自分の仕事に対する思いを
一方的に語っていると

「いいものを届けたいって言うけど、あなたにとって良いものが
相手にとって良いものとは限らないよ」
と教えてくれました。

これには堪えました。

理想ばかり語っているけど

自分の仕事はひとりよがりになってはいないか?

自分は誰の方を向いて仕事をしているのか?

将来のことも不安だらけで

いろんなことに悩みます。

自分を肯定してみたり、否定してみたり。

想いを巡らせ、何度も問いかけますが

堂々巡りで逡巡します。

はっきりとした答えも出ず、悶々として日々を送っていましたが
昨日、庭の杏を見たときにふと思いました。

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花が咲き、実をつけ始めた時に摘果した枝は
大きな実をつけ、手が届かないからと無精をして
何もしなかったところは小さな実になっていました。

こうやって手をかけた分だけ、
はっきり結果として現れるのだから
私も今までと同じように
仕事と生活を分けないで
矜持を持って仕事をし
自分に言い訳しないで
誰かの一助となれるよう
丁寧に日々を積み重ねる中で
きっと共感してくださる方や
それを楽しみに求めてくださる方と繋がれるんじゃないか、
何も変わらないからと諦めるのではなくて
自分が心地よいと思えるところを目指して
過去から学び、より良い未来を模索する。
それしかないんじゃないのかなと。

事業ですからしっかりと利益も
出さなければなりませんが
何よりも大切なのは
仕事や暮らし、日々の営みを通して次の世代に
ものづくりであったり
事の本質を繋いでいくことが
今を生きる私の務めだと改めて確認した
七年目の初日です。

6回目の6/2

私が枝を剪定してアルバイトさんが葉を一枚ずつ切り取り
笊にのせて陰干しし、袋詰めにしたローリエ(月桂樹の葉)です。

ローズマリー、タイム、フェンネル、
パセリ、レモンバーベナ、杏子、ブラックベリー、
フランボワーズ、ルバーブ、欅….
お店の周りには開店と同時に植えて
無事育ってくれたハーブや果樹がすこしだけあります。
(失敗して枯れたものもたくさんあります💦
ローリエもスーパーに買いに行けば
安くで売ってるものなので
特別なものではないのですが、
自分たちで育てて、収穫して、少しだけ手間をかけて用意する
いつもは誰かに代わってもらっている仕事を
自分でやってみると、そのものに対する愛着が
少しだけ増すような気がします。
お店の歩みと同じに成長してきたこの乾燥させたローリエにも
私たちが日々の暮らしや仕事で大切にしていることと
通じる部分があると思ったので、六周年の記念にと
ご来店いただだいたお客様にお渡ししました。
お客様から
「どうやって使えばいいの?」
「へー、煮込みとかに入れるといいのね」
「普段買わないんだけど、使ってみるね!」
などの様々な声をいただきました。
ちょっとした一手間で、
ほんの少しいつもより丁寧に作ってみることで
充実した時間を過ごせたり、新しい発見に出会うこともあります。
そういったものは不思議と連鎖して
たった1つの気付きから価値観が変わるような
大きな変化に繋がったりするから不思議です。

丁寧に日々を紡ぎ、心豊かな日々を送りたい。
また仕事を通してお客様の日常を彩る一助となりたい。
そんな思いを込めたローリエです。
まだ少し残っていますので先着順にはなりますが
明日もお渡しできたらと思っています。

画像に含まれている可能性があるもの:植物、自然、屋外
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デコレーションケーキに対する思い

当店ではホールサイズのケーキの御予約を
お渡し日の二日前までにいただいております。
当日でもお渡し出来る商品もいくつか取り揃えておりますが
いちばん需要のある、いわゆるショートケーキ様
(フルーツ、生クリーム、スポンジ)のデコレーションケーキは
二日前までの御予約をお願いしています。

今日は「なぜ二日前までなのか?」という理由を書いてみたいと思います。
一つ目は当店のショートケーキ様のデコレーションケーキは
前日から組み上げて、その状態で一日寝かせることで
イチゴの香りがクリームに移り、フルーツ、生クリーム、スポンジ、
それぞれの水分を適度に移動させることでスポンジに湿りを与え
一体感を生み出しています。
なのでご注文を頂いてから、段取りを整え、生地やクリームを準備し
より良い状態で組み上げていくには二日という時間がどうしても必要なのです。

それと、これは作り手側の都合なのですが
当店のお菓子は、現時点では私一人で作っています。
製菓の作業工程上、冷やしたり、熱したり
ゼラチンで固めたり、溶かしたり、泡立てたり、と素材の状態を変化させながら
最良の状態を見極めて加工していくため
一度仕込みを始めると、長時間手を止めることができなくなってしまいます。
技術者がたくさんいるお店ならば、誰かに代わってもらうことも可能でしょうが
一人で作っている当店ではそれができません。

販売は全幅の信頼を寄せる妻とアルバイトさんに任せていますので
私は厨房でより良い商品を作ることに集中しています。

今すぐにデコレーションケーキが欲しいと望まれると
その作業を止めなければならず、そうすると溶かしたり固めたりする
素材の物性はもちろんの事、作り手の精神状態を
その前の最高に集中力を高めた状態に戻すことが
とても難しいのです。

何を大げさにと思われるかもしれませんが、
アスリートがルーティンを大切にしてコンディションを整えたり
瞑想したり、コンセントレーションを高めて
最高のパフォーマンスをするための準備をするのと同じように
お客様の体を作り、心を育む食べ物を届ける生業に就くものとして
より良い品をお届けできるように日々の生活を節制して
仕事に望んでいます。

大抵一回の仕込みで100個以上の商品を作ります。
すると一回のパフォーマンスの低下で100人以上の方が
残念な思いをしてしまいます。
それは、味わいとして
お客様がお気付きにならない程度の差異かもしれませんが
自分で気付いている以上、ごまかすことはできません。
やはりできるだけ良い品をお届けすることが
私の務めだと思っています。

お客様の満足を感じる基準は百人いれば百通りあると思います。
味わいではなくて、接客に重きをおく方もおられるでしょうし
包装などのパッケージが華やかなものが好みの方もおられると思います。
自分の思う品質へのこだわりが
全ての方にご満足頂けるとは思いませんが
出来るだけのことをしたいと思っております。

本当はホールケーキが売れれば単価も高く、
商売としてはとても嬉しいです。
でもうちの立地は何かのついでに来ていただけるような
利便性の良い場所ではなくて、わざわざここを目指して遠
くから足を運んでくださるお客様がほとんどです。
ご自身での楽しみに召し上がられる方も多いため、
以前勤務していたような市街地にあるお店と比べて
ホールケーキの需要は不安定です。
そんな中で常時ショーケースにホールケーキを用意しておくと、
必ず売れ残りが出てしまいます。
今までの経験では、多くのお店で売れ残ったホールケーキを
カットして翌日販売していました。
ショーケースという名前からわかる通り、
商品を綺麗に魅せるための箱です。
中で冷風が回っているため、商品の水分を奪ってしまい
そこに長時間置いておくと、味わいが落ちます。
その味わいが落ちているとわかっている商品を、販売することは
やはり心苦しいのです。

お店に出せないとなると廃棄しなくてはならなくなります。
できれば自分が一生懸命作った品物を捨てたくない。
素材の生産者さんの努力やご苦労を思うと捨てられない。
でも味わいの落ちた商品をお客様に届けるわけにはいかない。
もうなんともいえない葛藤です。
こんなことで悩むなら、菓子屋を辞めたいと思うこともあります。

しかし、前もってご注文を頂いていれば、
ショーケースの風に当てることもなく、
余裕を持って準備して自分たちなりの最高のパフォーマンスで
品物をお届けすることができる。

当日や直前のご注文をお断りすることで、実際売り上げは落ちました。
でも、お客様の大切な記念日に<自分たちにできることはやりきった>
という満足は得ることが出来るようになりました。

それと、何年か前にコラムで書きましたが
技術的なこと以外に、もうひとつ大事にしたい思いがあります。

最近のお菓子屋さんはショーケースにホールケーキが沢山並び、
お客様のニーズにいつでも応えてくます。
いつ行っても買えます。
大切な人の記念日を忘れていても、なんとかなっちゃう(笑)
急な用事にも対応出来て、とても便利です。
実際、ウチのお店でも当日販売分のホールケーキを求めて
ご来店下さるお客様もたくさんおられます。
でも少し淋しい気もするのです。

記念日をお祝いするためでも
旅行の際のお土産でも、
誕生日プレゼントでも
あの人はこれが好きかな?それともあっちかな?
他のお店の方が喜ぶかな?と考える。
大切な人が好きなものを思い出し
どれだったら喜んでくれるだろう?
とその人のことだけ思う。
日が迫るごとにドキドキする。

すぐにお店に行けば買えてしまうその便利さと引き換えに
そういった大切な人を思うといったかけがえのない時間を
失ってしまっているのではないでしょうか。

受取手の感じる「誰かが自分のことを想ってくれていた」という価値は
職人がいくら努力しても加えることはできません。
少し事前に準備するだけで、お金では買えない、
その人にしかできない価値が贈り物に加えられるなら、
やらない手はないと思うのです。

伝わらないかもしれませんが、
ロウソクの数や年齢を見て
漢字を入れるのか、ひらがなで書くのか迷ったり
男性か女性か?どんな場所で?と想像をふくらませて
デコレーションしたり、メッセージを書いたりしています。
きっと誰かに喜んでもらいたいと思って贈るお菓子のはずですから
私たちも参加させていただくからには
微力ながら、思いを込めて作ったお菓子をお届けしたいと思っております。

長々と書き連ねてしまいましたが

・前日から寝かせることでより美味しくしている。

・一人で製造している事と、製菓の作業工程上、急に手を止めることができない。

・高めた集中を途切らせたくない。

・より美味しい状態で召し上がったいただきたい。(味わいの落ちたお菓子を届けたくない)

・大切な人を想う気持ち、時間を楽しんで欲しい。

そんな気持ちから、前もっての御予約をお願い致しております。
ご理解、ご協力をいただけましたら幸いです。

また、合格祝いや何かの催しで当日必要になる時もあるかと思います。
種類は限られますが、当日お渡し出来る商品もいくつかございますので
急な御入用の際にはご相談下さいませ。
私たちにできる精一杯の品をお届けしたいと思っております。

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デコレーションケーキに対する思い

トゥジュールでは、デコレーションケーキの御予約をお渡し日の前日までにいただいております。

当日でもお渡し出来る商品も、いくつか取り揃えておりますが
いちばん需要のある、いわゆるショートケーキ様(フルーツ、生クリーム、スポンジ)のデコレーションケーキは前日までの御予約をお願いしています。
「15分で出来ます」と作ってくれるお店もあります。
技術的にはそれも可能でしょうが(ウチでは人手が足らなくて無理ですが…)それでは15分なりの味にしかならないと、僕は思っています。

前日から組み上げて、フルーツ、生クリーム、スポンジ
それぞれの水分を適度に移動させることで
一体感を生み出すことが主な理由なのですが
技術的なこと以外に、もうひとつ大事にしたい思いがあります。

最近のお菓子屋さんはショーケースにホールケーキが沢山並び、
お客様のニーズに応えてくれる。
いつ行っても買える。
大切な人の記念日を忘れていても、なんとかなっちゃう(笑)
急な用事にも対応出来て、とても便利です。
実際、ウチのお店でも当日販売分のホールケーキを求めて
ご来店下さるお客様もたくさんおられます。

でも少し淋しい気もするのです。

記念日をお祝いするためでも
旅行の際のお土産でも、
誕生日プレゼントでも、
あの人はこれが好きかな?それともあっちかな?
他のお店の方が喜ぶかな?と考える。
大切な人が好きなものを思い出し
どれだったら喜んでくれるだろう?
とその人のことだけ思う。
日が迫るごとにドキドキする。

すぐにお店に行けば買えてしまうその便利さと引き換えに
そんなかけがえのない時間を
失ってしまっているのですから。

私たちも、お客様のプライベートな時間に
参加させていただくからには
伝わらないかもしれませんが、
ロウソクの数や年齢を見て
漢字を入れるのか、ひらがなで書くのか迷ったり
男性か女性か?どんな場所で?と想像をふくらませて
デコレーションしたり、メッセージを書いたりしています。

微力ながら、私たちも思いを込めて作ったお菓子をお届けしたい。

そんな気持ちから、前もっての御予約をお願い致しております。
ご理解、ご協力をいただけましたら幸いです。

また、種類は限られますが、当日お渡し出来る商品もございますので
急な御入用の際にはご相談下さいませ。

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<ガトー・フレーズへの想い>

ふんわりしっとりと焼き上げたスポンジに
程良く酸味の効いた香り良いイチゴとソースを
口溶け良くなるよう考え抜いたバランスでサンドし、
最高に美味しい生クリームをフリル状に絞り上げました。

ガトーフレーズ用に焼き上げるこのスポンジは
一般的なジェノワーズとは配合も作り方も大きく異なります。
このお菓子のためだけに焼き上げる
きめ細かくきれいな泡と水分をたくさん含んだ
口溶けの良い生地。

生地の水分量を多くすることでシロップを打たなくても
しっとりと口溶けよくなる。
シロップを打たないことで、スポンジがが冷えきらず
生クリームとの温度差が生まれることで生地に温かみを感じ、
優しい印象を与えます。
また、焼き上がり冷めた生地は底面に近いほうが密度が高く、
上面に近い所は比重が軽い。
それを考慮して底面に近い所は薄く、
上面は厚くスライスして使います。

生クリームは根釧地区の農家さんが
牧草で育てた牛の生乳から作られています。
カロリーの高い乾燥飼料などで育てられた牛の
真っ白な乳と違って
草に含まれるカロテンの影響で
真珠のような少しアイボリーがかった色合い。
殺菌温度が低く、脂肪球を大きなままで残した
生クリームを使用しているため
乳味感が強く、とても口溶けが良い。

イチゴはしっかりとした酸味と香りを持ったヨーロッパ産。
旬の時期に収獲された中まで真っ赤な美味しい苺です。
生地とクリームとの相性を考え、
程良い厚さにスライスしてサンドする。
生地には同じイチゴで作った香りの良いソースも染み込ませる。
その状態で一日寝かせることでイチゴの香りがクリームに移り、
クリームの水分がスポンジに湿りを与え、一体感がうまれる。

最後は、この最高に美味しい生クリームを
フリル状に絞り上げて完成。

小さい頃、とても憧れたイチゴと生クリームのショートケーキ。
ざっと書き出しても、自分なりに譲れないポイントがたくさん詰まったお菓子です。

イチゴの赤って、とても魅力的で人の目を惹き付けます。
ショーケースに並べた、たくさんの菓子の中から
一番最初に無くなっていくのは
苺が乗ったケーキなんですよね。

今では一年中手に入りますし、のせてるだけで売れちゃう。
この魅力にお菓子屋さんは抗えないです(笑)

ウチのように小さな規模で僻地でお店をやっていると
果物屋さんにも配達してもらえないんです。
街で働いていたときは年間通して
フランボワーズ、ブラックベリー、ブルーベリー、メロンにブドウ….
様々なフルーツが仕入れられました。
サイズや数を電話やFAXで伝えれば
翌日には必ず届けてくれるんですもん。

でもここではそれが出来ない。
基本、扱えるのは自分で買い出しに行き
手に入る食材だけになりました。
最初はあれも使いたいのに、これも無いのか…とイライラし
通販で取り寄せて使ったりもしていたんですが、
そういったことにも少しづつ違和感を感じ
なんだか無理をしてることに疲れちゃって、
そのとき手に入る物でお菓子を作るように変わりました。
結果、旬の物しか手に入らないからそれしか使わない….
ということに繋がって行きました。
ショーケースに華やかさは無いけれど、
無理をしないことが
僕自身心地いいことに気付きました。

イチゴも旬は春先から初夏だそうです。
幼い頃、実家の裏の畑でアリと競争しながら
熟れたイチゴを収獲したのを憶えているのですが
その記憶も初夏だったように思います。

自分の感覚では、この時期のイチゴは露地物も多く
ハウスで作ったものとは香りも味わいも格段に違います。
それに比べて秋に出回りはじめた苺は
味も香りも希薄な印象を受けます。
(もちろん品種にもよります)
僕は古い株かもしれませんが「女峰」の様に
脂肪分の高い生クリームと組合せても負けない存在感がある
しっかりと酸味、香り、甘味を持った
バランスのとれた苺が好きです。
それも旬の時期の露地物がいちばん美味しく感じます。

現在の苺は、生産者さんの努力や品種改良で
良いものが次々産まれているのでしょうが、
一番苺が売れるXmasに照準を合わせて
寒い時期に化石燃料を使ってハウスをあたため苗を育て
少し無理をして作っている….。

夏以降、Xmasに向けて苺の争奪戦が始まります。
価格も状況によってかなり高騰します。
普段1パック500円前後の苺が1000〜2000円になったりもします。
大手さんは契約で大量に数をおさえて、
価格も上がらないようにしているそうです。
ウチのような小さなお店は、数を確保出来るかどうか?
価格は幾らまで上がるのか?ということに
翻弄されてしまいます。
僕も今までやってきましたが
夏や秋にXmasのチラシを作って、
手に入るかどうかわからない素材を使った
商品の予約を取ることが
どうしても耐えられなくなりました。

・使うなら旬の美味しい苺を使いたいこと。

・化石燃料に頼って無理して作った苺の
 サイズ、数の確保、価格の高騰に翻弄されたくないこと。

・苺のヘタを取る人手が足りないこと。

そんな理由で、今年はガトー・フレーズの上に
苺をのせるのをやめました。
その代わり、最高に美味しい生クリームを
贅沢に絞り上げています。
とてもバランスよく、おいしいガトー・フレーズになりました!

苺が乗っていないことでご満足いただけない
お客様もおられるかもしれませんが
どうしてもイチゴが食べたい!と思われる方は、
スーパーで1パック買ってきてのせられたほうが
たくさん食べられてかなりお得です(笑)
しかもXmas当日よりも1週間前くらいに始まる特売の日に。
酸味の強い品種ならは身持ちも良いので、あたっていない
しっかりしたものだと野菜室に入れておけば多分大丈夫です。

私自身「そうはいっても〜」「そんなの無理だから」という
既成の概念に今まで縛られてきました。
でも今年はそこから抜け出して
その競争から降りることにしました。
作業工程が増えるため、お届け出来る数も減りますし
収入も減る….。
かなり悩みましたが、そのほうが
自分らしい仕事ができると判断しました。

昔は「〜日徹夜した」「〜千台作った」と言うことを
誇らしげに話す人が多かった。
人口が増えて景気も右肩上がり、
みんなが消費する社会だったから
そういったこともできたのでしょうが
「それっておいしかったの?」と言う思いが
ずっと自分の中にありました。

今年のXmasはしっかりと腰を据えて、
新しいやり方、価値へのチャレンジをしてみようと思います。

でもでも、このガトー・フレーズ、メチャメチャ美味しいですよ!
一切妥協はありません。というか、とても手が込んでいます。
Xmasにこんな構成のガトー・フレーズ作ってるとこ
僕は知りません。
ウチのこのお菓子、お客様から
「子供たちがいつもはホールケーキ買ってきても全部食べきらないのに、ここのは完食したよ!」
とか「ここのは生クリームが違うからとか口溶けがよくって…」と声をかけていただくことが多いのです。
詰め込んだことが伝わっているんだなぁ…と思うと
嬉しくって泣きそうになります。

たくさんの数はご用意出来ませんが、
こんな思いに共感してご予約して下さるお客様がおられましたら
精一杯の仕事で美味しいお菓子を届けたいと思っています。