今回お届けするシュトレンやパウンドケーキですが、開封後はできるだけ早く召し上がっていただいた方が、風味や食感を良い状態で味わっていただけると思います。
アドべントに合せて少しずつ切って食べると言われますが、ウチではナイフを入れると3日も経たないうちになくなってしまいます(笑)焼き菓子といえど使っている素材は生鮮食品です。まして油脂の多いものなら油は確実に酸化していきます。クッキー類でも焼いてから7日くらいで最高に美味しくなってあとは徐々に劣化しますし、
パウンドケーキも寝かせて美味しいのは10日くらいであとは水分が飛んでパサパサしていき、香りも平坦になっていきます。複数の素材を混ぜ合わせておくと、時間の経過とともにそれが馴染んでいき、渾然一体となった味と香りになります。それぞれの素材の味わいがはっきりと感じられるフレッシュなものか、全体がまったりと一体感があるものを目指すのかは、作り手の考え次第です。当店のものは前者を意識して作っています。実際にドイツでマイスターをとった方も、「ドライフルーツはほとんどのお店は漬け込まないよ〜、前日にお酒と合わせるだけ」とおっしゃってました。私自身も以前は熟成させたドライフルーツを使って、焼き上げてからもしばらく寝かせてと一般的に言われる作り方をしていましたが、毎年試行錯誤して作り続ける中で<新鮮な方が美味しいんじゃないか?>との思いが湧いてきました。
どこかで盲目的に<寝かせた方が美味しい>と信じていたのですね。私は魚釣りが好きなのですが、釣ってきた魚も、魚種や大きさ、季節によって熟成させた方が美味しいものも、新鮮な状態で食べた方が美味しいものもあります。使う素材や、製法によっていちばん美味しい期間は違うのだと気づかせてくれた大切なお菓子です。
作り手の考えや個性がはっきりと表れるので、この時期はいろんなシュトレンを食べ比べてみるもの面白いですね。
また、いつもケークを作る時は生地の口溶けを重視するのですが、この生地では生地にたっぷりの生キャラメルを配合することで重厚な味わい深さを出しました。一方で配合中の卵を卵黄と卵白に分け、卵白をメレンゲにして加えて重くなりすぎないように配慮しています。
ぶ厚くカットするよりも、1cm厚くらいにスライスしたほうが美味しく召し上がっていただけると思います。
先日お客様から頂いたゆずでコンフィチュールを炊きました。なんともいえない良い香りに
厨房中が包まれました。七日は二十四節気でいう大雪ですね。車のタイヤ交換も終わって冬
の備えができました。クリスマスに向けて頑張りたいと思います。 店主
この土地でお店を始めた時、一番困ったのはフルーツが手に入らないことでした。
街にいる時には業者さんに前夜にファックスを一枚流しておけば、翌朝には品物が届いていました。苺、ラズベリー、ブルーベリー、ミュール、パイナップル、スターフルーツ、ブラッドオレンジ、ほおずき、マンゴー、パッションフルーツ.....日本全国、また世界の市場から季節は関係ないとばかりにたくさんの品物が揃っていました。こちらでは、青果店のある市内からは遠すぎるため、配達はしてもらえません。また、フレッシュのラズベリーやペリカンマンゴーなど輸入フルーツは「需要がない」と言われて市場にすら入ってきませんでした。手に入る場所は物流が違うAEONなどの大手スーパーだけ。毎日そこに買い出しに行くわけにもいかず、知己の京阪神の業者さんから送ってもらいやりくりしましたが、とても違和感を感じていました。恥ずかしながらそんな状況に身を置いて初めて、自分が扱っている果物の旬はいつなのかな?と調べたような次第です。その過程で、たくさんの流通業者さんや、農家さんの努力で品物を届けてもらっていること、石油燃料を燃やして温めたハウスで、本来の旬でなくても無理して育てていること、海外に日本の苗を持って行き安価な労働力で育てたものを輸入していること、などいろんなことがわかってきました。とても便利ですし、それらを飾ればショーケースは一気に華やぎます。苺の赤は特に鮮烈です。それをのせた商品は真っ先に売れていきます。
商売としては、そこから離れることはとても怖かったのですが、無理してフルーツを使うことをある時期から辞めました。旬の美味しいものが手に入ればその時だけ。それ以外は必要最低限のものしか使わない。生のフルーツを使った華やかな飾りはできないけど、その分中身に加工した<旬の時期に収穫して作られた>ピューレなどを使った層を作り、味わいを出そうと決めました。
なので今でもよくお客様から「ショーケースに色がないね」と言われてしまいますので「中身に詰め込んでおりますので、一度召し上がってみてください」と返答しています。晴れの日のお菓子にはそういった華やかな演出も必要でしょうが、僕は背伸びしないで作る今の自分のお菓子が好きです。手に入らないなら....と少しづつ植えた果樹やハーブが季節ごとに恵みを与えてくれるようになりました。四季の移り変わりを感じながら仕事ができる今の環境をとても愛おしく思っています。
年末にしか作らないシュトレンを仕込むのは久しぶりすぎて毎年ドキドキするのですが
その一年に学んだことをどう咀嚼してそのお菓子に落としこむのか考えてブラッシュア
ップしていく作業はとても楽しいです。 店主
今まで当店にはなかったチョコレートのムースを使った
ホールケーキをご用意しました。
今までご用意していたガトーショコラや、
湯煎焼きにしたクラシックショコラは
小さいお子様には濃厚すぎる….
とのお客様の声を聞き
ずっと気になっていました。
今回はお子様や若年層の方、
「チョコレートを好きな、どの年代の方にも気に入っていただけるようなお菓子を」
というコンセプトで作りました。
<フレシュール・ショコラ>
なめらかなチョコレートのクレームブリュレと
水分をたっぷり含んだ
軽い口どけのチョコレートムース、
ヴァニラのシロップを染み込ませ、
口どけよくした
アーモンドとチョコレートの生地を重ね、
漆のように艶やかなカカオ風味のグラサージュで覆いました。
チョコレートのお菓子ではありますが、
とても口どけがよく
瑞々しいのが特徴です。
大きさ 8x16cm(5〜6名様分) 2800円
普段テレビは全く見ないのですが、Amazonプライムを使ってお風呂で「深夜食堂」というドラマ
を1話づつ観るのが最近の楽しみになっています。料理の艶っぽさが人生の悲喜交々と相まって、なんだかジンときてしまいます。見終わったあと妙にその料理が食べたくなっていつも困るのですが、最近、自分にとっての美味しさってなんだろうな?とよく考えます。
最高の素材で優れた料理人が作った料理でも、給仕する人が無愛想にドンッっとテーブルに料理を出したりしたら、それだけでもう台無しになってしまい、美味しさを感じられないでしょう。
逆にいくらホスピタリティが充実してても物に本質がなければ本末転倒です。
話中に赤いウインナーをタコにして美味しそうに食べるシーンがあるのですが、普段だと結着剤や保存料、発色剤や色粉などの添加物がたくさん入ったこの手の練り物はできるだけ避けているのですが、観ていて「とても美味しそう」に感じている自分がいることに気づきました。
幼い頃、それを食べた家族の団欒やお弁当のおかずの記憶も一緒に呼び覚ましてくれました。
素材や技術、空間やサーヴィス、作り手が背負っているもの、食べ手が背負っているもの、そういったものがいろんな形で作用しあって、それぞれの「美味しさ」を醸し出す。優劣ではないそれぞれの「美味しさ」、そこに寄り添える仕事がしたいと改めて思わせてくれた、素敵なドラマでした。
今回ご注文くださったお客様は9割がリピーターの方でした。グッと堪えましたが受注処理をしていて熱いものが溢れそうになりました(涙)前回の販売から数ヶ月、たくさんの遠方の客様が不定期の開催の田舎のこんな不便なお店の商品をお求め下さることを本当に本当に嬉しく思っております。
次回もまたご満足いただける品をお届けしたいと思っておりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
この秋には業者さんが主催する洋菓子講習会に何度か参加しました。
意識は高く持っているつもりでも田舎にいるとどうしても鈍化して
しまいがちなので、良い刺激をもらいました。更に美味しいお菓子
を作りたいと思います。 店主
おとうさんのそんけいするしょうせつかに
「しばりょうたろう」さんというひとがいます。
しばさんのようにものごとをふかくほりさげてかんがえ、
ひとやものやくにに、おもいやりをもって
たいせつにできるひとになってほしいとのねがいをこめて
いちじをもらって遼(はるか)というなまえをつけました。
先日、小学一年の息子の参観で
「自分の名前の由来を調べてきて発表する」という授業があり
たずねてくる息子に説明した文章です。
これでもずいぶん端折りました💦
本当は、私が尊敬する司馬遼太郎さんの筆名の由来が
「司馬遷に遼(はるか)に及ばざる日本の者(故に太郎)」
から来ているという話を聞き、
対象に愛を持って、ものすごい取材量で情報を集め、
慈しむように言葉を選んで書き上げる司馬さんのように
「常に自らに謙虚で他者に思慮深い、懐の深い人になってほしい」
という願いを込めて遼という一字をもらって
「はるか」と名付けました。
ですが、子供にはまず司馬さんが何をしていたどんな人なのか?
その司馬さんが敬愛していた司馬遷とはどこのどんな人なのか?
はるか及ばないという一見ネガティブなイメージを
どう自らを戒める謙虚さと結びつけて理解させるのか?と
頭の中を難題がグルグルと回りましたが、
今は理解させるのは無理だろう、その代わり
父や母の願いがこもっているのだよということだけは
伝えられたらと考え、冒頭の文章に収めました。
とりあえず、白髪頭の眼鏡をかけたおじさんの写真を見たら
司馬さんだとわかってくれるようにはなりました(笑)
私が自らの名前の由来を教えてもらったのは
ずいぶん大きくなってからでした。
少し記憶は曖昧ですが高校生位か、成人してからだったような気もします。
『実るほど頭を垂れる稲穂かな』
母との何気ない会話の中で、この句が出た時に
「あなたの名前の由来もそこからきてるんだよ」
と言われた時には驚きました。
名字が 稲木 名前が 稔
あー、そんな風な思いを込めていてくれたんだぁ。
歳を重ねるごとにわかったような気になって
踏ん反り返っていないかな?
そもそも年齢を重ねたからって実っているとも限らない。
大丈夫か?俺…と半ば焦りにも似た感情が湧いたのを覚えています。
毎年この時期に、水田のたわわに実った稲穂を見るたびに
「あ〜、自分はまだまだだな…。物事の本質を見抜けるように
もっと努力して、もっと精進しなければ」と
背筋を伸ばしてもらっています。
私事ではありますが、七月に大好きだった父が他界し
先日滞りなく四十九日の法要をすませることができました。
数年前から病とたたかっていた父ですが
僕がお店をはじめるにあたり、
体が充分ではない中でも
一緒に雪山の中で原木をトラックに乗せ
敷地に運んではチェンソーで玉切りにし
薪割りして、自ら単管パイプで組みあげた
薪棚に積み上げてくれました。
山陰に帰省してきてからは
意見が衝突して喧嘩もたくさんしたけど
今思えば、どれだけ心配かけていたのだろうと
自分が恥ずかしくなります。
お店の周りを見渡せば、父が残してくれたものが溢れています。
もう少し意見を聞いておけばよかったな。
もう少し一緒にお酒を飲めばよかったな。
もう少し褒めてもらえるように頑張ればよかったな。
決して器用な人ではなかったのかもしれないけれど
とにかく一生懸命に僕らを育ててくれたのだと
今になってわかりました。
いろんなことやものがあって今日という日がある。
拓郎さんの歌の一節が頭の中を流れます。
「そして今 わたしは思っています
明日からもこうして生きて行くだろうと」
ただただ「ありがとう」そして「おつかれさまでした」
僕もあなたのように
とにかく一生懸命生きたいと思います。
父がお世話になった皆様へ
長い間、大変お世話になりましたことを心よりお礼申し上げます。
有難う御座いました。
お盆明けにお休みをいただいて、
家族で「神さまのおわす国」へ行ってきました。
伺ってみたい所は沢山あったのですが、
いつもは子ども達の迎えなどがあり、
日帰りするのは難しい状況でした。
そういった事情から、今までは
なかなか向かうことができなかったため、
今回は家族で泊まりでゆっくりと出かけました。
ほぼ初めて巡る松江や出雲の街並み。
とても綺麗で美しく、文化が成熟していると
強く印象を受けました。
観光で外から入ってくる方が多いのだと思いますが、
もてなしてくださる心意気を様々なところで感じ、
大好きな街になってしまいました。
まだまだ伺えていないお店や史跡もたくさんあるので、
また必ず訪れたいと思います。
三日もお休みを頂いてしまい、
無事明日から社会復帰できるか不安です…….💦
様々なものを見聞き、体感し多くの刺激をいただきました。
自分が大切にしたいものも、再確認できました。
明日からまた、精一杯自分らしい仕事をしていこうと思います!
この度は当店のWEBSHOPをご利用いただき,誠にありがとうございます。
今回お届けするフィナンシェとエンガディナーですが、どちらもバターやナッツをふんだんに使った
贅沢な仕立てのお菓子です。大きく口に頬張るよりもペティナイフなどで一口大にカットして、数回
に分けて召し上がっていただいた方が、より滋味深さを感じていただけると思います。
皆様にお気に召していただけると良いのですが….。
先日、SNSで著名なシェフが紹介されていた
「二ツ星の料理人」という映画が気になり、京都で観てきました。
僕はレストランで働いたことはないのですが、厨房という特殊な緊張感に包まれた場所で働く身とし
ては理解できることがとても多く、厳しいシェフのもとで仕事をした時の辛かった記憶がフラッシュ
バックしたり、観ていられなくて何度も顔を覆ったり。見習いで働いていた時、中間管理の立場だっ
た時、シェフとなった時、オーナーシェフとなった時、それぞれの気持ちが痛いほど伝わってきて、
たまらなくなってしまいました。
あ〜、あの時自分はこんな風に感じていたなと思い出したり、今自分が一緒に働いているスタッフは
こんな風に感じているのか…と作品を通して初めて自分を客観視できたり。
でも、昨日より今日、今日より明日と、より良いものを目指して志や情熱を持ったものが毎日を必死
でにじり寄っていく姿は本当に素敵だなと思いました。
食事って人が笑顔になれたり、幸せを感じる時間を提供出来る仕事だと思うんです。
この映画を観て、そんな生業に就けたことを改めてよかった、自分は幸せ者だと思いました。
杏の収穫がほぼ終わりました。今年は初めて半分の枝を摘果してみたのですが、やはり手をかけた枝は
色艶の良い、美味しそうな大きな実を付けてくれました。摘果しなかった方は鈴なりですが、実も小さく未成熟のものも多かったように思います。幹や根にかかる負担、土の力などいろんなことに目を配って来年も実りを与えてもらえるよう、寄り添っていけたらと思いました。 店主
今回は、ほぼ初めての<生菓子だけの発送>を試みました。世代や性別を問わず人気の<レチエ>と、初夏にぴったりの瑞々しさが特徴の<ココ・フレーズ>をご用意しました。
レチエは、東京・三宿にあるラ・テール洋菓子店で勤務していた時に出会ったお菓子が元になっています。そこに自分なりの好みや、もっと美味しく出来ないだろうかという思いを込めて出来上が
ったお菓子です。クリームチーズや乳酸発酵させた生クリームのコクと酸味、ねっとりとした食感
と口溶けの良いムース、スポンジの卵の優しい香りとふわふわした食感。シンプルな構成ながら、いくつかの二律背反の要素がみごとに調和したお菓子だと自負しています。
ココ・フレーズは私自身も大好きなココナッツが主役のお菓子です。トロピカルな南国の香り、ミルキーでコクのあるココナッツは酸味のあるフルーツとも相性がよく私はイチゴやフランボワーズとよく組合せます。ゼラチンの量を少なめにしていますので、かなり柔らかい食感です。形は保ちづらく、解凍後に綺
麗に切り分けるのは少し難しいのですが、だからこそ出せる瑞々しさだと思っています。
ココフレーズは凍った状態で外周のフィルム、包んだOPPシートを外し、箱の台紙の上で解凍いた
だくと壊れません。どちらのお菓子も形を綺麗に切り分けるには、熱いお湯に浸し温めた包丁で冷
凍状態のまま切り分けると美しい層にカット出来ます。6月2日でTOUJOURSは5歳を迎えました。あの頃は5年後に今の様に営業する姿を想像することも出来ず、ただただ必死に毎日を過ごしてお
りました。それは、今もあまり変わっていないかもしれませんが(汗)この先の5年後もどうなっているかは分かりません。でも、わからないことを畏れるのではなく、ワ
クワクドキドキしながら新しい事に挑戦できる自分でいたいと思っております。
至らない事の多い小さな菓子店ですが、またさまざまなお菓子をお届けしたいと思っておりますのでこれからも何卒よろしくお願い申し上げます。
今年は初めて蓮を株分けしてもらいました。あの優美な姿がお店でも見られるのかと思うと
たのしみでなりません。(上手く咲かせられると良いのですが….) 店主